Update 2022.2.28

日本料理の心意気を居酒屋スタイルで愉しむ
「酒と魚DNA」

京Tea・リリ、切り株(京都調理師専門学校)さん

日本料理には「椀刺しが華」という言葉があります。お椀の出汁の味、そしてお造りの包丁の技術が料理人の腕の見せ所という意味です。それは決して料理人がその技をアピールするということではなく、お椀とお造りという極めてシンプルな料理を最もおいしい状態で提供すべきとする料理人の心意気。そんな日本料理の心を大切に、京割烹の系譜を受け継いだ味を居酒屋スタイルで提供するお店が、京都のビジネスの中心地 四条烏丸エリアにあります。居酒屋「酒と魚DNA」の店主・坂根圭哉さんと、お店を一緒に支えるお父様の坂根眞吾さんにお話をうかがいました。

私たちのDNAに潜む和食の味を再発見する店

店主・坂根圭哉さんは京都調理師専門学校を卒業後、祇園の名店「ぎおん 阪川」で10年過ごしたのち独立。コロナ禍中の2020年7月に「酒と魚DNA」をオープンさせました。DNAというユニークな名前には、和食離れがすすむ中、私たちのDNAの中に潜む和食に対する感受性を呼び覚まし、改めてその価値を発見してもらいたいという想いが込められています。若い世代の方にも是非本物の日本料理の味を知ってもらいたい、とあえて敷居を下げカジュアルに利用できる居酒屋というスタイルで開業されたそうです。

親子二人三脚でのスタート

いつかは自分のお店を持ちたいという想いを抱きつつ、学校卒業後は割烹の名店「ぎおん 阪川」に就職した圭哉さん。学生時代、学外研修先だった阪川の大将のお人柄と接客姿勢、そしてカウンター割烹の世界に惹かれたのがきっかけだったそうです。数年間の下積みを経て、徐々に調理の現場を任されるように。仕事にも慣れてきた頃「魚の水洗いの勉強をしてこい」、と阪川の大将に言われ、毎朝6時から京都中央市場の水産会社に修行に通った時期もありました。8年目にさしかかり、ステップアップのために転職なども考え始めた頃、煮物や椀物などお店の味付け全般を任される煮方のポストを担っていた先輩がお店を辞めることに。お店の味の要を握るといっても過言ではない重要なポストがタイミングよく周ってきました。こうして10年間でお店全体の仕事を経験した後に独立。30歳での独立は少し早いかもしれませんが、この若さだったら何かあってもやり直しがきく、そう思っての決断だったと振り返ります。日本料理店の現場は厳しいと言われていますが、「ぎおん 阪川」での10年間は大変だった時期もあるけれども、いつか自分のお店を持ちたいという想いがありましたから・・・全てが修行、全てが勉強という気持ちで仕事と向き合えていので、しんどいと思ったことはなかったです」と笑顔で圭哉さんは語ります。

一方お父様の坂根眞吾さんも、いつか息子が独立した際にサポートできるようにと、料理についての知識と技術を深めるため、医療機器のフィールドエンジニアの仕事を早期退職し、息子の母校である京都調理師専門学校の夜学に通うことに。卒業後、いくつかの飲食店でのアルバイトを経たのち親子で「酒と魚DNA」を開業。調理は息子の圭哉さん、お父様の眞吾さんはお酒とサービスを担当。息の合った親子二人三脚でお店を切り盛りされています。

コロナ禍の中で迎えた開業

圭哉さんが「ぎおん 阪川」を退職したのは、コロナ禍の最中の2020年4月。お店の開業はその3ヶ月後、7月に控えていました。当時は「7月までにはコロナ禍は落ち着いているだろう」と高を括っていたそうですが、予想に反してコロナ禍中の厳しい開業に。それでも坂根さんは前向きです。「うちのお店はいわゆる京都の間口が狭いお店と違って、外から中が見通せる入りやすいつくりになっているので女性お一人のお客様も多いんです」。コロナ禍で席数を減らしていたからこそ、お一人で初めてご来店のお客様にもカウンター越しにお声がけすることができ、じっくりと関係を築いていくことができました。そして「父と二人での経営も良かったのだと思います。」と語る圭哉さん。営業時間や席数が限られる中で、丁寧にお客様と向き合い、徐々に常連のお客様も増えてきたそうです。

一杯のお椀に渾身を込める

「酒と魚DNA」のメニューは、お品書きの流れに沿って注文していくと、割烹のコースのように構成されていています。中でも、日本料理の組み立ての中でいちばんのご馳走とされるお椀を是非召し上がっていただきたいと、坂根さん親子は話します。お椀の中味は季節ごとに変わります。この記事の取材日は冬のお椀、「かぶら蒸し」、「海老芋の蟹身あんかけ」、「すっぽん」の3種でした。一杯のお椀を通してお店の味付けの核となるエッセンスと季節を大切にする京料理の正統が滲み出ています。さらに、毎朝小浜から届く新鮮な魚は種類も豊富。中央市場の水産会社で鍛えた圭哉さんの経験を活かし、お刺身の他、焼きや煮付けなどお客様のお好みの調理法で提供しています。由緒正しき京割烹の風格を感じる一方で、居酒屋らしいカジュアルなメニューもあります。中でも人気メニューが、親子で相談しながら開発した自慢の一品「塩辛ぽてと」。万人受けする“カリッ”と“こってり”の絶妙なハーモニーにお酒が進みます。お酒のセレクションはお酒好きのお父様、眞吾さんの担当。種類も豊富に取り揃え、料理ごとのお勧めを提案してもらえます。酒と魚でキューっと一杯、今宵あなたのDNAに刻まれた日本人としての味覚を揺さぶられに行ってみませんか?

紹介したところ

酒と魚DNA

  • 営業時間 17:30~23:00(Lo 22:00) 定休日:日曜日(不定休日あり)
  • 京都市下京区燈籠町559-1 ジェイアイビル1F (ホテル日航プリンセス京都 真南向かい)
  • 075-365-5591
  • contact@saketosakanadna.com
  • https://www.saketosakanadna.com/

京Tea・リリ、切り株(京都調理師専門学校)さん

※ブログの内容は公開当時の情報です。

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