Update 2022.4.8

京の四季を感じさせる粋な隠れ家
「祇園つじや」

Rucha(京都製菓製パン技術専門学校)・chii(京都調理師専門学校)さん

祇園北側花見小路通りから一本外れた静かな路地にある「祇園つじや」。京町屋らしいひっそりとした佇まいに加え暖簾も看板もないので、文字通り隠れ家のような雰囲気です。和を基調とした風情ある店内では、季節の食材を存分に活かした素晴らしい和食を頂くことができます。

店主の辻宏樹さんはもともと岐阜で料理修業をしていましたが、そのお店が店をたたんでしまい、一度は料理を辞めたそうです。そんな折、知人から「一度、京都の料理を食べに行ってみては」と勧められ、訪れたのが辻さんのお師匠さんとなる方のお店でした。季節ごとに器やしつらえを変えるなど細やかな気配りに、和の文化をトータルで学べる京都でもう一度学び直そうと思ったそうです。辻さんの実家も料理屋を営んでおり、子どもの頃から料理は身近な存在でしたが、実家のお店は継がずに自分のお店を開いたそうです。
自身のお店をビルの1階で始めて9年半、2年半前に現在の場所に移転し、長年の夢だった京都の町屋での営業をスタートしました。

店内は1階がカウンター席、2階は個室があります。
コースの内容は、先付け・お寿司・お造り・お椀・焼き物・八寸・炊き合わせ・ごはん・デザートとなっていて、お昼と夜では内容が少し変わるそうです。今回はその中からお寿司、お椀、八寸、デザートをご紹介します。
八寸は、海老芋のから揚げ、琵琶湖のほんもろこの甘露煮、金柑と丹波の黒豆、なまことりんごのみぞれ和え、はたけ菜のからし和えが色とりどりに盛り付けされていました。
海老芋はから揚げにする前に出汁で味を染み込ませてから、揚げているそうです。黒豆は釘を入れて煮ることが多いのですが、祇園つじやでは黒豆の本来の色に仕上げるため、釘は入れずに煮込んでいるとのこと。季節を感じながら料理を楽しんでいただくため、器も季節ごとに変わります。取材に伺った2月は節分をモチーフにした器で料理が供されました。升やねじり梅の器に、尾形乾山の写しの雪松の器を使い、仕上げに柊を添えているそうです。

今の時期のお寿司は、五島列島のときさばか同じ海域の済州島の鯖を使った鯖寿司を提供しているそうです。鯖寿司の上には、お店で仕込んだ蕪の甘酢漬けが。鯖寿司の器は明治の初めのころの永樂得全の器で、前後で「福」と「壽」と書いてあるそうです。鯖は肉厚でしゃりは少なめ、あっさりとした味のとても美味しい鯖寿司でした。
お椀には甘鯛や聖護院蕪などを使っているそうです。聖護院蕪はすりおろしておつゆの方に使ってあり、味はうすくち仕立ての優しい味。甘鯛は表面だけを焼き、他のお店ではなかなかないゆりねのわらび餅を練って高温で揚げたものに、忍ネギという滋賀県・甲賀の特産物のねぎなどが使われています。お椀の器は昭和初期頃の輪島塗。一見シンプルに見えますが、蓋を開けると蓋の内側に椿が描かれており、お椀の底には椿のつぼみが描かれています。

デザートとしていただいたミニパフェは、紅茶のアイス、リンゴのコンポート、イチゴ、洋ナシ、蜂蜜のジュレ、リンゴのコンポート、みかんのムースと盛りだくさん。アイスやムースなども、すべて手作りとのことで、なんと蜂蜜ジュレの蜂蜜も、店主の辻さんの妹さんが作っておられるそうです。ろ過にもこだわり、一回しかろ過をしない不純物のない国産蜂蜜を使ったジュレは、一口食べると自然な優しい甘さが口いっぱいに広がりました。
リンゴのコンポートは鍋に材料を入れて沸かし沸騰したら火を消し、余熱で火を通しているそう。固すぎず柔らかすぎない不思議な食感がクセになります。
みかんのムースは生クリームとムースの二層で、みかんの酸味と生クリームの甘さがマッチ。さらに、蜂蜜のジュレと一緒に食べると甘さや酸味が合わさり、他ではなかなか味わえないようなミニパフェでした。器は立春大吉の節分の器で鬼などが描かれている、可愛らしいものでした。
今回取材させていただいた祇園つじやは完全予約制で、季節のおまかせコースがランチ9,240円・ディナー15,015円です(いずれも別途消費税+5%のサービス料を含む)。店主の辻さんと女将さんとの楽しい会話と四季折々の料理を楽しめる、心から満足できるお店でした。

紹介したところ

祇園つじや

  • 京都府京都市東山区祇園町北側347-51
  • ご予約は
  • 075-551-5557
  • Instagram
  • www.instagram.com/gion_tsujiya/
  • http://gion-tsujiya.com/

Rucha(京都製菓製パン技術専門学校)・chii(京都調理師専門学校)さん

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