Update 2022.2.28

京都でオンリーワンの和菓子を誂える愉しみ
和菓子店「青洋」

京Tea・リリ、切り株(京都調理師専門学校)さん

誂える──。着物、お茶道具、四季折々のオケージョンや自分の嗜好に合わせ、職人とともに唯一無二の一品を誂える文化が京都には今なお息づいています。今やショーケースに並ぶ既製品を買うことが一般的になった和菓子も、その昔はお誂えが基本でした。職人はお客様の要望に応えていくことで技術を磨き、進化させてきました。欲しいものが何でもいつでも手に入る便利な現代社会において、職人とのコミュニケーションを取りながらオリジナルな一品を一緒に作り上げる“お誂え”は、ともするとハードルが高い非日常的な出来事になってしまいました。

京都の北山にある和菓子店「青洋」は、和菓子が私たちの今の暮らしにより馴染のあるものとして、「伝統の技法を生かし、匂いを残しつつ、現代の生活スタイルに合う和菓子を提案」する、1個の注文から和菓子の“お誂え”に応えてくれる和菓子店です。

お客様とコミュニケーションをとりながら共に和菓子を作り上げる職人を目指して

もともともの作りが好きだったオーナーの青山洋子さんは高校を卒業後、教育大学の美術教員養成課程へ進学、卒業。しかしアーティストのように自らの思いで一方的に作品を世に生み出すのではなく、人とのコミュニケーションを取りながら物を作っていくことの方が性分に合っていると気づき、お菓子作りにその可能性があるのではと考え、大和学園京都製菓製パン技術専門学校に進学。在学中に京都の和菓子の老舗である「有職菓子御調進所 老松」の現社長の太田達(とおる)氏の講義を聞き、和菓子の世界はまさに「人と人を繋ぐ世界」、コミュニケーションをしながらお客様の特別な場所を作っていくという話に感銘を受け、和菓子の世界に飛び込みました。

卒業後「有職菓子御調進所 老松」に入社。最初の5年間はお客様と向き合う接客の現場に、その後の5年間は製造の現場でと、お客様のご要望を聞くこととその要望を技術で応えていくことの両面を経験、青洋を立ち上げるベースを学ばれました。和菓子職人の仕事は、過酷な仕込み作業もある体力勝負の世界。10年を迎えるころに体力的に限界が近づいてきたところで独立を決心、和菓子店「青洋」を創業されました。

新しいスタイルの和菓子店を模索して

オーダーメイドを主軸に考えていた青山さんですが、店舗を構えて待つ状態が続くのは避けたいと思っていました。さらに、これまでの和菓子の世界観とは異なる世界を提供したいと思い、出張和菓子店や出張レッスン、ワークショップなど、独立してからの10年間、試行錯誤を重ねながら今日の営業スタイルを確立されました。現在は月に4日間の店頭販売、その他はオーダーメイドの受注やイベントを通して和菓子の新しい可能性を発信しています。和菓子の新しい可能性を追求する中で様々な素材の生産者との出会いもありました。現在販売するお菓子の素材は旬の有機栽培の野菜や甜菜糖、天然色素を使うなど、原料にもこだわり、安心して食べられるお菓子作りをされています。開店当初から他のお店で買えるものは作らないと決めていて、これまでの和菓子にはない発想も取り入れつつ毎月新しいお菓子を提案しています。

クリエイティブプロセスを大切に

フランボワーズに餡子を組み合わせるなど青山さんの作るお菓子はとてもユニーク。しかし決して奇を衒うことなく、そこには和菓子の基本の安心感がしっかりと漂っています。それは技術をしっかりと叩き込まれた青山さんだからこそなせる技。基本の技術をベースに遊び心の余白を残したお菓子はどれもチャーミング。洗練を極めた美しさは、まるで工芸作品のようです。今では月4日間の営業日には、常連のお客様がその月のお菓子を求めに来られます。

毎月販売されるお菓子のネーミングは日本の古典文学から着想を得るなど、一つひとつのお菓子が生まれるまでのプロセスを大切にされています。時には話題のテレビドラマや映画を観るなど、とにかくさまざまな事柄がお菓子作りのアイディアの源泉になるので、「好奇心を張り巡らせることが大切」と青山さんは語ります。

お客様一人ひとりと向き合いながら行う和菓子のお誂え

「そのお菓子が食べられるシチュエーションをお聞きしたり、私のこれまでの経験値や技術的なお話をしたり、作り手として、ご依頼主と対話しながらひとつの和菓子を一緒に作り上げるプロセスが一番好きです」と語る青山さん。月1回4日間の店頭での販売のほか、お客様のご要望に応えお菓子のオーダーメイドをする和菓子のお誂えの仕事もとても大切にされています。和菓子1個のオーダーであっても複数のアイディアを提案し、お客様のご要望に真摯に向き合われます。誰かの大切なオケージョンに対し、自分がもつ経験値や技術を活かす、青山さんはご自身を職人だと表現します。

“京都でお誂え”・・・すこし敷居が高く、でもいつかは体験してみたい憧れの響きを感じますね。みなさんも大切な記念日などに、青山さんと一緒にオンリーワンの和菓子を誂えてみてはいかがでしょうか。

紹介したところ

和菓子店 青洋

京都市北区紫竹西野山町54-1

 

営業日 / 月4日 お知らせページでご案内 https://wagasiseiyou.com/news/

 

お菓子のお誂えのご注文 / お問い合わせページから https://wagasiseiyou.com/contact/

京Tea・リリ、切り株(京都調理師専門学校)さん

※ブログの内容は公開当時の情報です。