「万松青果株式会社」中路 和宏さんに聞く 〈3〉
京の食を支える仲卸の「心意気」
料理をする時、何よりも「食材」が必要になります。京の料理人達が理想の料理を作る時もそうです。京野菜をはじめとする京都の食材事情について、市場に店を構える仲卸業者の方に話をお聞きしました。
大事なものを守るために新しい事を取り入れる
全国に先駆けて日本初の中央市場として開設されたのが、京都市中央卸売市場です。その当時から京都市指定仲買業として市場内で営業。この頃は、大手スーパーに押され中小規模のスーパーや個店の閉店により仲卸業者が減少する中、万松青果では、働きたいという若い人が増え、躍進。中路会長曰く「お客様を大事にすることをしてきただけです」。
フリーアドレス、クラウドなど、仕事をするための環境は、効率よくするためにも新しいものを取り入れています。ただ「古くありたい」そうも思います。それは、年功序列ということにつながりますが、社員全員でその人をフォローする企業文化、売上の責任は社長がとるべきものという考えから。「人」が大事だということです。損得勘定ではなく正しいか正しくないかを基準に、取引先のお店やレストランが求めるものを仕入れて、確実に納品することが仕事です。そのために、最初に言われた値段よりも高い仕入れ値になったとしても、お客様が必要で、その金額が絶対なら予算内にするという損も。しかし、そこには信頼が生まれます。
一人ひとりが商品の目利きができる卸売業者へ
昔と違い今は、おいしい基準ができて、その中に野菜をはじめとした食材の良さがあります。シェフが産地直結の野菜を使い始めて、レストランが農家を開拓するような時代ですから「良い野菜は仲卸からじゃないと手に入らない」という時代ではなくなりましたよね。私たちができることは、野菜をはじめとした商品への目利きを鍛えて、顧客の要望を店の一人一人が確実に応えられるようにすることです。そして、ストックを持たず、何より新鮮な野菜を流すという事、お客様に満足してもらえることが一番大切。自分達のことより、お客様にとってより良い方向へ運ぶ助けができるようになれば。売り手発想ではなく、買い手発想でいること。最終的に、それこそが自分達の満足につながるように思います。