「万松青果株式会社」中路 和宏さんに聞く 〈1〉

野菜と人から学ぶ「食育」

料理をする時、何よりも「食材」が必要になります。京の料理人達が理想の料理を作る時もそうです。京野菜をはじめとする京都の食材事情について、市場に店を構える仲卸業者の方に話をお聞きしました。

今こそすべき生産者と料理人をつなぐこと

京都市中央卸売市場にある「万松青果」。最近は、今まで一般的に仲卸業がしてこなかった、生産者の現場にも注目。「私たちは橋渡しができる立場にあるから」と中路さんは話します。

ずっと市場で競りにかけられたものを落札して、お客様が望む野菜を提供してきましたが、ある時、障がい者が営む農園が、新型コロナの影響で出荷先を失い困っているという話を聞きました。私たちは、野菜を欲しいと思う人々を知っています。何かできるかもしれないと考えていた時、野菜を売りたい農園のニーズと、「想い」がある生産者の食材を使いたい料理人のニーズがあると気づきました。だからこそ、野菜を生産する方々と直接触れ合う機会をつくるようになりました。そもそも仲卸業は、生産者と取引のある市場と、買い手であるお店や料理人との間にいますから、生産者と関わることが少なかったのですが、今は時代が違います。野菜を売るなら、野菜を作る現場のことは知っておかないと。そして、どんなニーズにも応えることができれば、と思っています。

嫌いから好きへスイッチが切り替わる「食育」

生産者の方々のところへ、料理人とともに行くこともあります。実は、夏の「茄子の収穫体験」で、思いもよらぬ出来事がありました。「茄子が嫌い」という子どもがご家族で参加。子どもは、嫌いな茄子の収穫をして、最後には茄子丼をつくり食べることになりました。最初は怪訝そうな顔をしていた子どもが、どんどん笑顔になり、「こんなおいしい茄子丼はない!帰ったら、お母さんにつくり方を教えてあげよう」とひと言。驚き、学びました。2030歳代のお母さん世代で食に対する意識が低い方は、時間がなく同じ料理、好きな料理しか作らないことも多いといいます。お忙しいですから仕方がないのですが、限られた時間の中で、料理のレパートリーが少なくなったのは事実です。普段作らない料理、普段使わない野菜を料理するきっかけを作る。数々の食育プロジェクトに取り組んできてはいますが、この活動は、まだまだ道の途中だと思います。

お話しをおききした方

中路 和宏(なかじかずひろ)さん 「万松青果株式会社」 代表取締役会長 

京都市出身。23歳から5年間、東京・築地の青果卸売会社でセリ人として勤務後、家業の万松青果株式会社に入社。「経営者は従業員のために、従業員はお客様のために働く」をモットーに、弟・社長の昌則さんと改革に取組む。また50歳で、中小企業診断士の資格を取得。現在は、経営者とコンサルタントの2足のわらじで活躍中。