「株式会社ロマンライフ」河内 優太朗さんに聞く 〈1〉
ブランド力のある「京の洋菓子」
和菓子発祥の地といわれる京都。洋菓子で京都を語るなら、最近は抹茶素材のお菓子が主流になる。和菓子とは違う、京ブランドの洋菓子はどうあるべきか、京の洋菓子文化のあるべき姿についてお聞きしました。
京都風ではない京都の洋菓子をつくることが大事
京都の洋菓子とは?といわれると、漠然と抹茶のお菓子しか思い浮かばないといわれます。しかし京都は、各洋菓子メーカーや個店での歴史とともに洋菓子文化があり、京都を意識して動かれていることが多いといいます。洋菓子に「京のほんまもんを取り入れること」、それが大切だったと河内さんは話します。
抹茶のクッキーやパイの販売はありましたが、京都の洋菓子らしいものではなかった。いま思えばそういうことだと思います。洋菓子の製造・販売をする「京都北山マールブランシュ」は、1982年に「マールブランシュ北山本店」をオープンして、全国のデパートに出店するほどになりましたが、ある時、今の社長・父の知人から「何か“京都のおみやげです”といえるお菓子はできないか?」と、いわれたことをきっかけに、京都の洋菓子への意識が高まったそうです。
いま一度、私たちに何が出来て、何が一番の強みなのか。その追求をした結果、作り上げたのが「茶の菓」です。これは、抹茶ラングドシャではなく、お濃茶ラングドシャ。実は、私の母は茶道具屋の娘で、茶道の世界では薄茶ではなくお濃茶が正式だそうです。「苦みが勝つ薄茶より、お茶本来の甘みを含んだお濃茶をつかったお菓子なら、本来のお抹茶の美味しさをお客様に味わっていただけるのでは」というようなことを、父に言ったそうです。
京都の文化、京都の価値を感じられるお菓子をつくろう
「茶の菓」は、販売されるまでには2年から3年ほどかかっています。まずはお濃茶で使われるお茶の選定から始めたそうです。お濃茶用の抹茶は、高級で上質なもの。ですから、火に弱く高温に弱いという特徴があります。生地に入れて焼いてしまうと、すぐ茶色くなったり香りが飛んだりするので、配合を変えたり組合せてみたりと、試行錯誤したといいます。私は、その時はまだ大学生で、家に帰ると茶の菓がずらっと並んでいて、毎日試食をしていたのを覚えています。
私たちの原点に戻らせてくれたのが「茶の菓」。京都限定にして、しかも、37店舗あった全国のデパートも撤退しました。京都に助けてもらったという気持ち、京都の洋菓子は、僕たちのパーソナリティが担っている心意気をもって、ほんまもんの京都にこだわることが必要だと感じています。