「京懐石 美濃吉」佐竹 洋治さんに聞く 〈3〉
時代を見据えた「これからの京料理」
和食を代表する「京料理」。ユネスコ無形文化遺産に登録をされて数年の和食、その文化の背景や歴史などを物語る京都発祥の料理について、ありきたりではない今の話、料理人の本音をお聞きしました。
時代を見据えた「これからの京料理」
朝食はパン、ランチはファーストフード…今、食を選べる時代です。しかし、コロナ禍になり改めて「和食」が注目され、料理をつくり始める人が増えたといいます。
佐竹さんは「誰でもおいしく作れる和食になるよう、わかりやすく伝えることが大事」だと話します。
そもそも京都は、御食国と呼ばれる小浜や淡路島、三重・志摩から、高級食材が集まってきた歴史がありますから、料理人が集まり、熱意をもって追求をすることができたと思います。
だからこそ、洗練され発達した和食文化の歴史が残っているのですが、正直、庶民向けではなかったので、ちょっと敷居の高さを感じていらした方も多いのではないかと思います。
しかし、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、京料理を含めて飲食業界が歴史的に変わる出来事がいろいろありました。皆さんおうちにいらっしゃることが多くなって、京都に旅行できないこともあってか、京料理に興味を抱いてくださったように思います。
改めてその魅力に気づいていただいた方々は、和食文化に目覚められたようです。オンライン料理教室で八寸の厚焼き玉子の作り方を知るとか、とても良い傾向でとても嬉しく思っていました。それまでは、やはり海外の洋食文化や日本以外のアジアの食文化が話題になっていましたから、原点回帰でごはんとお味噌汁とおかず一品とか。
日本人に合う食生活の良さを改めて認識していただいているように思います。
余すことなく食材を使うサスティナブルな京料理を目指して
昨年、依頼された取組みでフードウェイスト(食品廃棄物)を100%ゼロにする献立を考えさせていただきました。
魚介の場合は骨が硬いこともあるので、専用の粉砕機などがないと難しいように思いますが、私ども「美濃吉」は川魚ですから、頭の骨も軟らかいので余すことなく使って8品の懐石料理を作りました。
鰻の頭と骨の甘露煮とか、鯉の頭と骨の揚げ煮、野菜の軸やヘタ入りの炊き込みご飯に、茶殻の羊羹なんかも作り、素材を使い切ることをしました。面倒なことが多く手間はかかりますけれども、今、一つの課題として「SDGs」がありますよね。やはり持続可能な世の中は、料理の世界でも必要だと思います。
廃棄物を出さないことは、食材の命を大切にすることでもあります。これからの時代に必要なことです。