「京懐石 美濃吉」佐竹 洋治さんに聞く 〈2〉

難しさが伴う「京料理の進化」

和食を代表する「京料理」。ユネスコ無形文化遺産に登録をされて数年の和食、その文化の背景や歴史などを物語る京都発祥の料理について、ありきたりではない今の話、料理人の本音をお聞きしました。

老舗ゆえ食材が変わっても店の味が変わらないことが大切

和食を代表する京料理には歴史があります。
過去から繋がる伝統的な料理を大切にすることはもちろんですが進化をして、新たな歴史をつくる使命もあります。しかしそこには、なかなか難しいことが多いと佐竹さんは言います。

今まで使ってきた川魚や京野菜などの食材は、同じようでも時代とともに変わりますので、店の味が変わらないように“今の食材”に対応をしていくことも大切です。
きゅうりでも露地物とハウスでは味が違いますし、供給ということでは、先代の時に鰻の稚魚が少なくなったことがありました。鰻だけの料理ではお客様に喜んでいただけなくなるから、春だったのでタケノコと一緒の料理を考えようかなど、アイデアで切り抜けたことも。
それに、新食材の登場もあります。料理人も使ってみたいですから挑戦をしますが、例えばフカヒレとトリュフを使った時「これ京料理なの?」といわれます。

私たち「美濃吉」の場合は、名物の鰻の源平筏や鮎の塩焼き踊り揚げを楽しみにお越しの常連の方々もいらっしゃいますから、単に新しいことを提案するだけでは受け入れていただけないシーンがあります。私どもの進化を押し付けずに新しい料理を提供することが大切です。お客様と食べたいものをお話しながら料理を提供することも多々あります。

器一つ変えることも悩むほど空間もすべて含めて京料理

料理のことや文化を知るお客様は、本来は真夏にしか使わない透明のガラス食器を初夏に使うだけでも、どうしてなのかお聞きになります。和食の懐石料理は、茶事や茶会の席で提供されてきた歴史がありますから、さまざまな決まり事が書かれている「茶道歳時記」という一冊の本を読んでいるか読んでいないかは、ガラスの器一つでもわかるわけです。
歴史と伝統を守りながら、新しいことへ挑戦するには、まずはイベントで試してみるとか、新しさを求める方の食事会で提案をしてみて進めてみるとか、気遣いが必要です。でも、京料理を進化させていくことは、料理の未来にも、実は店にも大事なことで、時代に合うように変わっていくことはとても重要な課題なのだと思います。

お話しをおききした方

佐竹 洋治(さたけようじ)さん 「京懐石 美濃吉」 調理総支配人 常務取締役

和食を代表する「京料理」。ユネスコ無形文化遺産に登録をされて数年の和食、その文化の背景や歴史などを物語る京都発祥の料理について、ありきたりではない今の話、料理人の本音をお聞きしました。

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